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「閑(しず)かさや 岩にしみ入る 蝉の声」
松尾芭蕉が山形市の立石寺(りっしゃくじ)で詠んだ一句です。
偉い先生の解釈によると、
「何という静かさだろう。ふと気がつけば、この静寂の中で蝉の鳴き声のするのがあたかも四囲の岩山の苔むした厳石(がんせき)の中へとしみ透(とお)ってゆくような気がする。あたりの静寂は一層深く、自分の心も澄みきって、大自然の生命の中へ融(と)けこんでゆくかのようだ」
立石寺は天台宗の名刹で、「奥の細道」の旅の途上に芭蕉が訪れた場所として知られています。別名「山寺」とも呼ばれ、童謡『山寺の和尚さん』に登場する山寺のモデルとも言われています。
写真は、数多くある堂宇のひとつ「開山堂」。立石寺を開いた慈覚大師・円仁を祀る場所で、2023年秋の東北旅行の際に撮影しました。
奇岩や怪石に囲まれたこの山全体が、修行と信仰の場としての趣を持っています。奥之院へ至る長い石段(なんと1015段)を登るのが正式な参拝ルートとされていますが、私は途中でギブアップしました。
さて、この句には「蝉論争」と呼ばれる興味深いエピソードがあります。昭和初期、歌人の斎藤茂吉が句の蝉はアブラゼミだと主張し、文芸評論家の小宮豊隆がニイニイゼミ説で反論。最終的に現地調査によって、句が詠まれた季節の立石寺周辺では主にニイニイゼミが鳴いていたことが判明し、茂吉が自説を撤回したという結末を迎えました。
一方、現代の関西ではセミといえばクマゼミ、アブラゼミはあまり見かけなくなりました。セミは鳴き方や時間帯の違いも興味深いものです。クマゼミは午前11時頃には鳴き止みますが、アブラゼミは午前に一度休み、午後も鳴きます。そしてニイニイゼミは日の出前や日没後も鳴き続け、一日中その声が聞こえることも。
最後に、掲載したもう一枚の写真は8月5日、高槻市で撮影したクマゼミです。